稲積邸 お披露目

先週末、島根県邑智郡邑南町の古民家、稲積邸の再生が完了したということで、お披露目会に参加して来ました。



日本民家再生協会さんの協力のもと、登録文化財として修復が始まったのが、去年10月。
約4ヶ月をかけ再生されたこの民家を、着工前・大黒柱ジャッキアップワークショップ・完成と
段階的に見てきました。

主屋は、基礎・土台全般を直すことがメイン工事でした。築年数160年以上の稲積邸の大黒柱は、根元の腐食した部分を撤去し、数十トン分の油圧ジャッキによって柱の根元から建物全体を持ち上げる形で15センチほど持ち上がりました。それに追従して、周辺の柱・束・土台など沈下していた部分が持ち上がり、基礎コンクリートを後打ちして足元を固めています。完成後の床は当然畳で見えませんが、1メートル角ぐらいのコンクリートの塊が床下・柱下に何個も埋まっています。これにより水平が戻り、木製建具のガラス障子・障子・襖等の開け閉めができるようになりました。これは、着工前を見ているだけに驚きの再生です。

↓大黒柱ワークショップの様子
http://ota-design-office.jimdo.com/2009/11/23/%E7%A8%B2%E7%A9%8D%E9%82%B8/

もうひとつ大きな工事は離れのトイレの復元。こちらは現代でも使えるようにと、普通の洋風便座がついていました。多少の新材も使用されていましたが、特徴のある窓等見事に復元されています。

今後 稲積邸は、地域の交流の場として活用されるようです。
記憶では間取りは、客間・座敷・奥座敷が南側に面して配置され、縁側と座敷はとても気持ちのいい場所となっています。
建設当時、武家住宅の流れを組んだこの「続き間」形式の間取りは、接客中心の社会生活を反映した形であると、調べた資料にありました。今回再生され、この気持ちのよい縁側にまた人が集まることで、現代の対社会性機能もいっしょに蘇っていくのかなと、しみじみ感じました。
登録文化財ということで費用もかかっていますが、こういった状態の良い建築が、いい形で修繕され、活かされていく。その再生の一連を見れたことは、貴重な体験となりました。